「韓国で最も信頼できる俳優」「すごい」と呼ばれるイ・ソンミン。
20年以上の下積みを経て、今では韓国を代表する演技派俳優の一人となりました。
本記事では、若い頃に経験した挫折や舞台俳優時代の苦労、人生を変えた出会い、そして現在の代表作まで、イ・ソンミンという俳優の歩みを紹介します。

画像提供:Ksyyle
イ・ソンミンのプロフィール
名前:イ・ソンミン (lee-sung-min)
生年月日:1968年10月15日
学歴:大邱科学大学校 放送芸能科
家族:妻・娘
イ・ソンミンは慶尚北道奉化郡の小さな村で育ちました。
幼少期は父親の仕事の都合で、ソウルや江原道など全国各地を転々とし、小学4年生のときにようやく故郷の奉化に戻ったそうです。
イソンミンの若い頃~俳優を目指した道のり
子供時代 父との映画の時間
イソンミンが暮らす村の奉化には映画館がなく隣町にある英州にまで、良く父が連れ出してくれたのです。
親子は頻繁に映画館に訪れ、また新作が出るたびに観にいきまるでVIP客のようだったようです
イソンミンは「子供の頃、父と一緒に観た『キングコング』や『ブルース・リー』のような映画を今でも鮮明に覚えている」と言い、特に『ウィークエンド・マスターピース』は、父が毎回見せてくれたといい、田舎に住んでいたら触れにくい文化を吸収しいきます。
イソミンは後に
「私が俳優として情緒的に動くことができた理由は、父を通じて早くから映画を内面化したからでしょう。」
と語っています。
演劇との出会いと2度の挫折
彼の人生を変える出来事は、高校時代に訪れました。
市民会館で演出家ソン・スンファンが手がけた演劇を観て、イ・ソンミンは演劇の魅力に完全に引き込まれました。
それが俳優になると決意した瞬間です。
ところが、周囲は反対します
父は「お前が演技が好きなのはわかるが、道は違う。良い大学に出て就職しなさい。
暫く旅行にでも行くがいい」と演劇学校の願書を捨ててしまいます
この時が一度目の挫折だったと言います。
しかし、大学に通ったあと、
バス停に貼られていた劇団のメンバー募集のポスターを見かけます。小規模な劇団だったので勉強との傍らでできそうだという思いから家族に内緒で演劇の世界に足を踏み入れます。
劇団での経験で世界を広げたイソンミンですが。学校の図書館員がイソンミンの母に勉強はせず、劇団生活をしていることをつい口にしたことで、また家中が大騒ぎになってしますのです。
イソンミンの叔母さんまで出来てきて、演技を反対し、軍隊にいくように勧めます
イソンミンは公演の途中で入隊します。
イ・ソンミンの下積み時代
トッポギのスープで腹を満たした大邱時代
「舞台に立つだけで心臓が高鳴ったのです」
イソンミンは舞台を立つことをあきらめず、
除隊後、ある演出家から「大邱に来い、タバコ代と飯代は出してやる」という誘いを受け1991年に大邱へ向かいます。
実際はご飯代が出ず、マーガリンと砂糖、を溶かしたお湯で空腹をしのいだと言います
空腹と孤独で月を眺め泣いたこともあったとインタビューで率直に語っています。
実はあまり知られていませんが、この時
一度奉化に戻り、2カ月だけ肉体労働をしています
しかし、あれほど反対した父や家族が今度は戻らないで、もう一度チャレンジすることを勧めます
イソンミンは、演技を続けることをします。
塗炭の生活を続きますが、舞台に立ち続けることは辞めませんでした。
この時期に振り付師の弟子として来ていた舞踊家の妻と出会っています
イ・ソンミンの結婚と単身上京
2001年の全国演劇祭で『豚狩り』で最優秀演技賞を受賞したイ・ソンミンは、2002年に妻と娘を大邱に残し単身でソウルへ上京します。
韓国演劇のメッカと言われる大学路(テハンノ)で自分の実力を試したいという思いから、家族には「3年だけ挑戦してみて、うまくいかなければ戻る」と約束していました。
ソウルでの生活は決して楽ではありませんでした。
家賃も満足に払えず、保証金を削って生活費に充て、より安い家に追われるように引っ越したこともあったそうです。
当時幼かった娘が肉を食べたがっても、家計が厳しく1人前千ウォン程度の薄い豚バラ肉しか買ってあげられなかったといい、イソンミンは
「今もその薄い豚バラ肉を見ると、当時の記憶が浮かんで悲しく辛い」とインタビューで語っています。
イ・ソンミンの俳優人生を支えた出会い
実力を見抜き、支え続けたソン・ガンホ
2007年の映画『シークレット・サンシャイン』で、イ・ソンミンは同じ劇団の先輩・ソン・ガンホと初共演します。
ソン・ガンホはその後も出演作品の監督へイ・ソンミンを推薦し、『渇き』のオーディションにも行くよう勧めました。
しかしイ・ソンミンは、監督が自分の演技を直接見たわけではないのに、誰かの紹介だけで役を得ることに抵抗を感じていました。
オーディション当日、
「ソン・ガンホさんとは親しいのですか」
と聞かれると、
「いいえ、親しくありません」
と正直に答えたそうです。
結果は不合格。
それでもソン・ガンホは気を悪くすることなく、その後も『冬の王国(原題)』などへ推薦を続けました。
後年、二人は『弁護人』で再共演し、自然と距離を縮めていきます。
イ・ソンミンは、
「私は人見知りで、『お兄さん、お兄さん』と愛嬌を振りまくタイプではありません。ガンホ兄さんもとても静かな人です。」
と語っており、お互い酒席でも静かに笑いながら語り合う関係だと明かしています。
イ・ソンミンは、ソン・ガンホの存在について
「無名の俳優にとって、本当に信じられないほどありがたいことでした。」
と振り返っています。
実力だけではチャンスが訪れないこともあります。
しかし、その実力を見抜き、支え続けてくれる先輩との出会いは、イ・ソンミンの俳優人生を大きく前へ進めました。
イ・ソンミンがすごいと言われる理由
イ・ソンミンが「すごい」と言われる理由は、20年以上にわたる下積みを経て、人生そのものを演技に変えた説得力にあります。
若さではなく、人生がにじむかっこよさとでも言うのでしょうか、
演技・存在感・年齢を重ねた渋さ・作品の中で見せる責任感から生まれるものから来ます
そのため「切迫感」「臨場感」を与えます
映画『ソウルの春』の演技について、
監督は
「イ・ソンミンは寸法を測ったように正確に演技する。明瞭でぴったりと収まる感じで、韓国で最も演技が上手い人の一人だと思う」
と最大級の称賛を送っています。
イ・ソンミンは視線や声のト
どんな演技でも「難しいとは思わなかった」と大変さを出さない
イ・ソンミンは視線、声のトーン、わずかな表情の変化だけで人物の内面を伝えることができる俳優として知られています。
脇役からの20年以上の積み重ねでしょうか、
その演技力を見る人は賞賛します。
しかし、どのシーンでも「大変だった」とは一言も言いません。
自分の中で吸収しているからでしょうか、
努力の形跡を表に出さない演技が特徴的とも言えます。
苦労を苦労として見せないことも、イ・ソンミンという俳優の魅力なのかもしれません。
どこにでもいて「誰でもできない」上司役「ミセン」で注目
以前までは「観たことはあっても名前は知らない」という人も少なくありませんでした。
『ミセン-未生-』以降は、人々が「イ・ソンミンの名前は知らなくても、彼の演じた役の一つひとつは鮮明に記憶するほど知名度が上がってきた。」と評されるほど、地道な積み重ねで今の地位を作り上げました。
『ミセン』では人情味あふれる上司を、『財閥家の末息子』では冷徹な創業者を演じるなど、作品ごとにまったく異なる人物像を作り上げてきま
イ・ソンミンを見る共演者からの評価
イソンミンの演技力
共演者たちから寄せられる評価の高さも、イ・ソンミンの実力を物語っています。
映画『奇跡』で親子役を演じたパク・ジョンミンは、イ・ソンミンについて「先輩の演技に感嘆しながら見ていて、自分の台詞を忘れたことが一度や二度ではない」と語っています。
さらに「本当に学ぶ気持ちで演技した」とも明かしており、同じ俳優でありながら“観客のように見入ってしまった”
若手からベテランまで、多くの俳優たちがイ・ソンミンに対して「学ぶ存在」「尊敬する先輩」といった言葉を口にします。
イソンミンの性格
更にパクジョンミンは、「先輩は本当に思いやりのある人です。現場で厳しく振舞うのではなく、若い後輩達と冗談を交わし緊張を溶かしてくれます。それを見て益々先輩のファンになりました」
その圧倒的な演技力はもちろん、人柄や現場での姿勢も含めて、俳優仲間から深い信頼を集めているのでしょう。
イ・ソンミンの代表作
『ミセン-未生-』(2014年・tvN)
イ・ソンミンの代表作として真っ先に挙がる作品です。
漫画原作のオフィス群像劇で、営業3チームの課長であるオ・サンシク役を演じました。
新入社員チャン・グレ(イム・シワン)の潜在力を高く評価する上司であり、漫画から飛び出してきたような完璧な演技で視聴者を魅了しました。
様々な理由で辞職に追い込まれ、最終的に退社を決断する人間味のある中間管理職を演じています。
業界では知られていた実力俳優が、ようやく視聴者に届いた作品として伝わります。
『記憶~愛する人へ~』(2016年・tvN)
弁護士パク・テソクが認知症によって自分の記憶を失っていく過程を描いた作品で、イ・ソンミンが主演を務めました。
本作でドラマデビューを果たした2PMのジュノとの共演でも話題になりました。
法廷劇とヒューマンドラマを融合させた作品として評価されています。
『財閥家の末息子』(2022年・JTBC)
『財閥家の末息子』ではスニャングループの創業者チン・ヤンチョル役を演じ、孫のチン・ドジュン(ソン・ジュンギ)との頭脳戦を繰り広げました。
慶尚道方言と老人特有の濁った声色まで演じ切り、サムスンの創業者であるイ・ビョンチョルのような演技だったとも評されています。
『ソウルの春』(2023年・映画)
1979年の12.12軍事反乱を描いた歴史映画で、2023年観客動員数第1位を獲得した大ヒット作です。
陸軍参謀総長のチョン・サンホ役を演じ、反乱軍に拉致される姿を熱演しました。
監督は「陸軍参謀総長として揺るぎない威厳を感じるキャラクターだ。同時に乱世の中で感じる不安感に向き合う立体的な人物だ」と語り物語を左右する存在です。
『未成年裁判』(2022年・Netflix)
少年事件を扱う法廷ドラマで、キム・ヘスと共演しています。
イ・ソンミンは、少年刑事合意部の部長判事カン・ウォンジュンを演じました。
少年法改正を目指して政界進出を目指すものの、自身の子供が試験問題流出事件に巻き込まれ、政治家への道は絶たれてしまう複雑は心情を魅せました。
本作は「OTT Best 国内シリーズ10選」に選定された作品です
『鉄槌教師』(2026年・Netflix・最新作)
度を超えた学生・教師・保護者によって崩壊した韓国の教育現場を守るために創設された「教権保護局」の活躍を描く、最新作のNetflixオリジナルシリーズです。
イ・ソンミンは、教育大臣のチェ・ガンゾクを演じています
キム・ムヨル、チン・ギジュ、ピョ・シフンらと共演。演出を担当するのは『未成年裁判』と同じホン・ジョンチャン監督。
監督の信頼の元に演じたチェ・ガンゾクは、教育現場を社会の中で解決しようと奮闘する役である。
イ・ソンミン現在の活動|なぜ今も注目され続けるのか
イ・ソンミンが今も注目され続ける理由は、社会の中で生きる「大人」の姿を演じ続けてきたことにあります。
イ・ソンミンが演じる人物には、家庭・会社・国家など、それぞれの立場で責任を背負う人々が数多く登場します。
働き盛りの40代から人生の晩年を迎える80代まで、年齢や立場の異なる人物を自然に演じ分け、その人生そのものを感じさせる演技が高く評価されています。
一時は高齢者役が続いたことでイメージが定着することを本人も懸念していました。しかし、それは老人役を否定したのではなく、一つの役柄に固定されることを避けたいという思いからでした。
『ハンサム・ガイズ』ではコメディにも挑戦し、『しあわせな選択』では青龍映画賞助演男優賞を受賞するなど、現在も新たな役柄へ挑戦を続けています。
幅広い年代の人生と責任を自然に演じ分けられる俳優は、韓国映画界でも稀有な存在と言えるでしょう。
まとめ |経験を全て肥やしにした俳優
イ・ソンミンはその実力が世間に知られるまで約20年もの無名時代を送りました。
生活苦の中でも俳優を続けた経験は、中年以降に演じる人物へ、そのまま深みとして映し出されています。
慶尚道方言も、30代まで地方で暮らした経験があるからこそ、土地に生きる人々のリアリティを自然に表現できるのでしょう。
ドラマや映画で一度演じた人物が忘れられないのは、その人生が「演技」ではなく「生きた時間」として伝わってくるからです。
だからこそ、イ・ソンミンが演じる人物には、「演じている」というより、「その人が生きている」と感じさせる説得力があります。
経験を無駄にせず、一つひとつを演技へと積み重ねてきたこと。それこそが、イ・ソンミンのすごさと、韓国で「最も信頼できる俳優」と呼ばれる理由なのかもしれません。

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